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月刊【ダートスポーツ】編集部の公式ブログ。様々なモトクロス・エンデューロ情報はもちろんのこと、取材時の裏話や新商品、各地のレース情報などをアップします。海外ネタなど、雑誌よりも早い情報もアップしていきます。

ザ・クラフツマンシップ vol.14/モーターサイクルショップ ニュートン代表・高橋信也

ザ・クラフツマンシップ vol.14/モーターサイクルショップ ニュートン代表・高橋信也
東大阪市に店を構えるモーターサイクルショップ ニュートンの代表を務める通称「てんちょ」。エンデューロをはじめとするレースにも積極的でオフロードに強いが、あくまでも「街のバイク店」であることにこだわりを持つ。写真はスタッフと一緒に店前で。奥様の比佐さんもエンデューロライダーで、結婚後二人で店をオープンさせた


ザ・クラフツマンシップ vol.14/モーターサイクルショップ ニュートン代表・高橋信也

モーターサイクルショップ
ニュートン代表・高橋信也


趣味性の高いバイクだからこそ、こだわり続けたい技術がある。オフロードバイクのジャンルにおいて、豊富な経験と高い技術、プライドとスピリッツを持つ職人を訪れるコーナー。第14回は、自身や仲間たちとオフロードバイクをエンジョイする、モータサイクルショップニュートンの「てんちょ」を訪ねる

PHOTO&TEXT/D.Miyazaki 宮崎大吾


ザ・クラフツマンシップ vol.14/モーターサイクルショップ ニュートン代表・高橋信也ザ・クラフツマンシップ vol.14/モーターサイクルショップ ニュートン代表・高橋信也
本誌ハッピーエンデューロでもエンジョイ。チャージャーなどバイク店同士も仲が良く、みんなで盛り上げている(Photo/折口祐介)



ありきたりの店名にはしたくなかった

大阪芸大に在学中、エンデューロが好きな人達が周りに多かったという高橋氏。漫画家のきらたかし先生も大学の先輩だ。プラザ阪下からも近く、やがてバイクに傾倒していき、バイク店に就職。25歳でモーターサイクルショップニュートンを立ち上げて、今年で23年目を迎えた。

「店の名前は色々と候補を出したんですが、恥ずかしくてそのノートはもう自分でも見られません(笑)。ありきたりの名前にはしたくなくて、腑に落ちる名前が『ニュートン』だったんです。名前自体に知名度があるし引力を象徴する名前で、1度で覚えてもらえるインパクトがあると思ったんです。現在の店のイメージカラーのピンクも、決める前は嫌いだったんですよ。『青い方がええな』なんて言っていたら、当時のスタッフから『てんちょ、絶対ピンクですよ。優しいし、目立つし』って言われ、『林家パー子みたいで嫌やけどな』なんて。

でもニーズがあったんですよね。僕自身がセンスがないから、周りにいいブレーンがあったんです。店を始めるまでは弱気だったので自転車もやろうとして、勤め先近くで知り合いの自転車屋のおっちゃんにスポークの張り方とか教わって、それが面白くてさっさと覚えちゃったんです。おっちゃんに可愛がってもらって、なぜか僕がそこでバイクを修理したり、売りまくる時期もありました(笑)。でも『おっちゃん、ごめん、自分の店やりたいから、ボチボチやめるわ』って。」  

実はこの東大阪は、バイクのニーズがかなり多かった。店の物件を探していたところ、親せきのおっちゃんから声がかかった。『しんちゃん、バイク屋するならこの辺でやらへんか?』と。大型店舗が周りに何軒かあるものの若干の距離があり、通勤でバイクを使う人達が困っていた。『おっちゃんが困っているということは、ここにニーズはあるんだな』と、現在の場所でのスタートを決めたのだという。

「お客さんのニーズがあるところに真摯に答えること。自分もそこで活かされて、商売になる、というのが僕のモットーなんです。」

ザ・クラフツマンシップ vol.14/モーターサイクルショップ ニュートン代表・高橋信也
世界的に活躍中の木彫りアーチスト、森寸氏による高橋店長の木彫りが、そのままニュートンのキャラクターに。有名になる以前に、二人はオフロードバイク繋がりだったのだ


ザ・クラフツマンシップ vol.14/モーターサイクルショップ ニュートン代表・高橋信也
重整備やサスペンション作業などは高橋氏自ら、2階の整備スペースで行う


ザ・クラフツマンシップ vol.14/モーターサイクルショップ ニュートン代表・高橋信也
2階は電話ボックスの製作工場だった頃の名残で、クレーンがある。そのまま使えるということで重宝しているそうだ



オフロード専門店ではなく普通のバイク屋であり続ける

今でこそオフロードバイクに強い店だが、最初からニーズがあったわけではない。開店して3年目くらいから徐々に、好きだったオフロードバイクに復帰し、コースで仲間も増えて、少しずつオフロード主体に変わっていったのだ。 「『オフロード専門ですよね?』と言われることもあるんですけど、絶対に『普通のバイク屋です』と答えているんです。明日仕事に行かないといけないおっちゃん、おばちゃんのニーズは生活に直結しているから、本当に重要。『そっちもほんまに重要やねん』とお客さんにも言ってます。もちろん、レースにも万全の態勢で出てもらいたいので、決して手は抜けません。今の悩みは、おかげさまで少しずつ名前も知って頂いてきましたけど、キャパシティに限界があることですね。ありがたいことですけど、一般の整備はスタッフに任せきりでなかなかできないので、少しずつ改善しているところです。整備が普通にできる店が減っていますね。本当に困っている人は助けなくてはいけない。そこが本当に悩ましいです。」  

オフロードの裾野を広げるため、コースに恵まれた大阪の地の利も活かし、お客さんたちとよく走りにいく。

「せっかくバイクがあっても使い方が分からなければもったいないですし、コースは最初は怖くて抵抗があるかもしれない。でも、林道と違うところは、怖いと思ったらひとり休憩する事もできるし、広場などで自分のペースで乗る事もできます。イベントを開催したりして、楽しく続けていってもらう橋渡しも大事です。コースで顔見知りになり、声をかけたりすると楽しくなって、トランポ買おうか、レーサー買おうかという気持ちになる。そういうきっかけを作るの絶対大事ですよね。

チームを作るとルールができたり、よそから入りにくくなるので、あくまでも『ニュートンを通しての仲間』みたいな感じでやっているんです。関西はバイク店同士が仲良くて仲間意識があるのもいいところです。」

ザ・クラフツマンシップ vol.14/モーターサイクルショップ ニュートン代表・高橋信也
YZ125Xの走りを激変させ大好評のユニバーサルキャブレター。本誌でも度々テスト紹介し、大好評なのだ(photo/井上 演)


僕はクラフツマン(職人)じゃなくて、
商売人なんです(笑)。



銘品ユニバーサルキャブレターができるまで

ニュートンが取り扱うYZ 125X専用のユニバーサルキャブレターは、本誌でも度々紹介した製品だ。マシンファクトリーフェアルが作成したキャブレターを商品として販売し、アフターサービスなどを行うのがニュートン。

「僕はYZ250FXに乗っていて、実はYZ125Xはいいバイクとは思ってましたが、2ストはどうしてもピーキーですよね。フェアルの星野さんがケイヒンのキャブレターに早くから注目していたのですが、ケイヒンはなかなかセッティングが出ないんです。国内外のサイトで調べてパーツを取り寄せていいところまで来ても、あるところでみんなつまづいてしまう。たまたま星野さんが試作したものを付けて走ったらめちゃくちゃ良くて、商品にするためにテストをすることになったんです。あまり乗っていなかった息子のYZ125Xを引っ張り出して、調子もいいし楽しくなってひたすら乗り込みました。ただ、商品にするからには故障が許されないですし、中途半端なものでは店の信用も失う。やはりメーカーは凄いと実感しました。1年半くらいかけて何人からのライダーにも声をかけて走ってもらったり、真夏の6時間レースでは息子と一緒に、あえて混合比50:1くらいに薄くして走ったりする中で、確かな手ごたえを感じていきました。

ケイヒンの利点はフラットな特性・商品の名称どおりのユニバーサルな性能を出すのに適しています。斜面でのオーバーフローにも強いと感じますし、付け替えるメリットは大きいです。 PWK純正ボディーに構成パーツも重要パーツは純正を使っているので、クオリティーも安心して頂ける商品だと思います。

うちはテストして商品としてブラッシュアップして、お客さんのアフターフォローをすることが役割なんです。星野さんが情熱をかけて作ったものを世に広めたくてやったことでした。僕は工業系の出身じゃないから、技術は星野さん、現場は私の役割で、余計に頑張りたいとも思ったんですよ。」  

このキャブレターはヤマハの関係者さんも大いに認める良品で、中身の答え合せをすると、お墨付きをもらったのだという。すでに全国で50個ほど販売している。

普段の仕事に追われるだけじゃなく、他業種にもヒントがある。 「ボヤボヤ生きずに感性を磨いて、ニーズがあれば柔軟に商品にしたりして仕事に出来たら、楽しいこともある。埋もれたらあかんなと思うんです」と、今日も楽しく前向きに仕事をしている。職人というよりも商売人なんです、と「てんちょ」は話してくれた。

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ユニバーサルキャブレター以外にもエアフィルターオイルや、オリジナルのフォークゲーターなども販売中



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モーターサイクルショップ ニュートン
住所:大阪府東大阪市楠根3-2-47
TEL:06-6746-9111
URL:https://ms-newton.com
国産車から輸入車まで、様々な車種を取り扱うバイク店。オフロードバイクに強いが、どんな車種でもメンテナンスや販売など親切に対応してくれる。YouTube「ニュートンチャンネル」も稼働中!


月刊『ダートスポーツ』2022年5月号(http://www.zokeisha.co.jp/dirtsports/archives/36305
に掲載された記事となり、情報は発売日当時のものとなります。



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