2025 CRFのテーマは高剛性&安定性UP! 開発責任者が語る変更点とは?
Honda
CRF250R
2024年9月13日(金)、D.I.D全日本モトクロス選手権近畿大会会場「名阪スポーツランド」にて、ホンダによる2025年型CRF250R・CRF450R説明会が開催されました。
例年この会場ではHonda系チームを対象とした説明会が開催されていますが、今年はフルモデルチェンジイヤーということでダートスポーツも出席。解説された内容を早速お伝えしましょう!
【開発コンセプト】
CRFのイメージを覆す(再定義)として、
Redefined CRFというキャッチを掲げています。
今回のテーマはズバリ「安定感」。
25 CRF250・450シリーズ開発責任者(LPL)の森田匡人(もりた まさと)氏と、足回り設計プロジェクトリーダーの海老沼隆敏(えびぬま たかとし)氏が今回解説してくれました。
それによると、2024年モデルまでのCRFは軽快性は高いものの安定性に欠けるという北米での評価が定着してしまっており、それを払拭させたかったそうです。そこでCRFの強みである軽快性はそのままに、高い接地感、コーナリング安定性も両立させることに力を注いでいます。
その理由を追求した結果、
「フレームが柔らかいことでサスペンションが仕事をしていない」
「他社フレームとの比較もした結果、確かにメインフレームはホンダが抜群に柔らかい」
「それゆえにメインフレームが衝撃を吸収してしまっている」と分析し、フレームをはじめとする剛性UPを行っています。
【フレームの刷新】
まずはなんといっても刷新されたフレームが最大の特徴です。
詳しくはイラストを見た方がわかりやすいのですが、構成部品の70%(ヘッドパイプ、フロントダウンチューブ、スティフナーパイプ、ヘッドパイプガセット、ピボットプレート、クッションアッパーブラケット、テンションブラケット)を新設計することで、縦剛性を4%アップしています。
これにより、荒れた路面での車体挙動を抑えて、予測可能なものにしています。またフロントサスペンションの作動性を改善、タイヤ接地感を向上させているとのこと。
ちなみにこちらは2024 AMA Team HRCのCRF450RWE。市販車での参戦となるAMA用に、ヘッドパイプの縦剛性向上を図るため、レギュレーションで許されているパッチを張って対応したそうです。
こちらが今回撮影したCRF450Rのヘッドパイプ。
またリアフレームとメインフレームの締結点を変更しています。24モデルまではメインパイプだったのが、ピボットプレートに変更することで、メインフレームの高剛性エリア(クッションアッパーブラケット近く)へ変更し、外乱入力に対する車体挙動の予測性を向上させています。具体的に言えばリアフレームへ外乱入力が生じた際の左右方向、前輪の接地点移動量が旧型よりも27%減とのことで、コーナー進入の際のフロント接地感が向上しているそうです。
「サブフレームの衝撃がメインフレームに影響してしまうため、高剛性エリアで受けることで、衝撃伝導させ、フレームを撓ませるのではなく、硬い部分で受けるようにしました」.
【フロントサスペンション・フロント周りコンポーネント】
トップブリッジ、ボトムブリッジ、ステムパイプ(ステム勘合長)、フロントアクスルシャフト(シャフト抱き幅UP、ボルト締め付け)が新設計となっています。これによりフロントサスペンション全域でのスムーズな作動性が確保(フロントサスペンション以外のコンポーネントが作動を阻害しない)されています。
SHOWA製の49mmフロントフォークも各部刷新されています。構成部品が各部アップデートされていますが、アウターチューブの剛性アップに加えて、ダストシールとロッドシールも変更。フリクションを増す方向で安定性を狙っているそうです。またプレッシャースプリング、リバウンドスプリングはレートダウン、フォークオイル刷新など。
リアクッションは2ピースオイルシールにより、最大-9%フリクション低減。また450スプリングはレートダウン(54→52N/mm)。
【リアクッションリンク】
リアクッションのリンクは分割タイプから1ピースタイプへ変更されています。これにより11%の剛性UP、リンクレシオも変更されています(アクスルトラベルは下側-5mmカット)。効果としてはクッション作動性の向上、ピッチングモーションの抑制、ボトミングタフネスの向上など。
【フロントブレーキ】
NISSINのフロントブレーキキャリパーも新設計となりました。これはワークスキャリパーからのフィードバックということで、ピストンシール溝、ダストシール溝形状を見直し。またピストン材質も変更。キャリパー切削加工は「性能進化の外観アクセント」だそうです。性能面では熱間時のレバー遊び量が57%低減。
【メンテナンス性向上】
こちらはオーナー、ショップ、チームメカニックにも喜ばれているポイントだと思いますが、リアクッション取り外しが、サブフレーム、エアクリーナーBOXを外さずにできるようになっています。部品取り外し点数が8点(24)→5点(25)。
左右サイドカバー、マフラー、ECU、リンクA点ボルトだけですので、時間も半分以下に。
アメリカンホンダレースチームでの取り外し時間の実績は3分だそうです。
エアクリーナエレメントはワイヤークリップ固定になりました。
【エンジン】
エンジンに関しては450/250と共に出力ピーク以降の出力向上、タイトコーナーの出口でのスロットルレスポンスを向上させています。クランクシャフトは形状変更により、クランクピン周りの剛性もUPされています。これにより燃焼時のフリクションが低減。スロットルコントロール性の向上、加速性能の向上、高速域出力向上が見込まれています。
【吸気流れの改善】
エアクリーナーBOXも新形状となり、吸入抵抗の低減、PGM-FI(ECU)マッピングは全面見直しされています。スロットルコントロール性、トルク感も向上しているそうです。
【排気流れ改善】
CRF250Rエキパイ
CRF450Rエキパイ
250は排気抵抗を低減させたフロントパイプ形状に変更。マフラーボディは延長(250/450)。これにより中~高速域の力感向上、騒音値低減に寄与しているようです。次期FIM騒音規制に合わせ、3db低くなっているとのこと。
450は管長延長された新エキゾーストパイプを採用。低速~中速域の力感が向上されています。
エルゴノミクスの改善として、サイドカバー左右の膨らみを均一化しています。マフラー側に合わせて、左側も膨らませています。
近年の主流ともいえるシャープかつコンパクトな外装。
「剛性UPによる安定性向上をメインとした2025開発コンセプトにおける重量変化は?」という質問に対しては、
「確かに重量増にはなっていますが、我々としてはウェイトフィーリングには全く現れていないと考えています。ご想像の通りフレームは重量増です。マフラーも延長されています。正確ではありませんが、2kg弱アップしています。ただしマスの集中も図り、操作における軽快感は失われていないのです。軽快性を犠牲にするという考えはありませんから、CRFの良さをいかに崩さずに安定性を高めるかに力を入れました。」とお答えいただきました。
ホンダの車体特性としては、「社員が乗って仕様を決めること」「ワークスチームとの連携が強いこと」とのことで、
MXGPはまさに開発のための活動で、そこで磨かれた技術を市販車へ活かすとあらためて話していただきました。
CRF250RX
ちなみにCRF250RXについても質問しました。鈴木健二氏によるとYAMAHA YZ250FXは発売当初はアメリカ西部、デザート系ユーザーをターゲットにしていたものの、近年はGNCCに象徴される東部のライダーからの要望が強く、前後ホイールトラベル10mmダウンなどはそこからの強い要望に応えたものだそうです。それに対してCRF250RXの立ち位置などをお聞きしたところ、
「CRF250RXはGNCCライダーをターゲットとして掲げていましたが、西部での販売が想像以上に多く、その結果デザート系に振った仕様になっています。もう一度CRF250RXの意義を考え直す時期なのかもしれません」とのこと。一般的な日本のエンデューロ、クロスカントリーライダーにも、より多く受けいれられるCRF250RXの登場は、本誌宮崎個人としても強く思うところではあります。
昨日開催されたD.I.D全日本モトクロス選手権近畿大会では
IA2 横澤拓夢選手、IA1小方誠選手が2025年モデルで参戦されていました。彼らのコメントも追って取材予定です。