JEC YUBARI 2DAYS ー本誌宮崎が北海道公道エンデューロに初挑戦ー【3】


金曜日、丁未CTを下見していたライダーが感動しながら帰ってきた。そこには信じられないほどの美しいグラストラックが待ち構えていたのだ。こんな所走っていいのだろうか? と一瞬、幻のテストコースの中にいるような感覚になった。それだけでない。森の中を疾走するエクストリームテストに、ザクザクのクロステスト、廃墟となったテーマパーク、そしてボリュームある高速林道…。そのどれもがライダーの感性を刺激するものばかりだった。本誌宮崎が体当たりで初挑戦した夕張2DAYSの世界を紹介しよう
PHOTO/ANIMALHOUSE、DAIGO MIYAZAKI
TEXT/DAIGO MIYAZAKI
全日本エンデューロ選手権
第4・5戦 夕張2デイズエンデューロ
■日時/2013年7月13日(土)・14日(日)
■会場/北海道夕張市 石炭の歴史村駐車場を基点とする夕張市一円
ISDE参戦を前にモチベーションも上がる太田真成選手は、DAY1で4位、DAY2は3位に入った。本戦も親子3人での参戦だった
後ろ向きのGoProを装着したイシゲさん(池田智泰選手)は、全コースの模様からピットでの作業まで克明に記録していた。高速林道で背後を走るのは内山選手
今季好調の内山裕太郎選手。開幕戦広島で3位、定義は両日3位。そして今回は両日2位という好成績だ。ランキング2位。鈴木健二選手、太田選手とのタイトル争いも熾烈だ
JEC2日目の罠
一緒に参戦したIAワタライも厳しいタイム設定と、長い林道のルートに手こずり、調子が決して良くはなかった。僕らは気持ちをリセットして2日目に臨む。前夜に、1周目の渋滞を理由にタイムペナルティを無効とすると共に、Bタイム(雨天などを考慮した、Aタイムよりも緩い設定)を適用することが発表された。
2日目は1周目からタイム計測がある。だから僕は入念にウォームアップし、軽く汗を流して万全の状態で臨んだ。まず丁未のCT。気合いが空回りしてコーナーが決まらない。腕もあがってきた。それどころか、深く掘れたワダチで痛恨のスタック。リカバリーに手間取り、5:57・44というクラス最下位タイム。やっちまった。
この日最後の周回となる2周目、丁未CTは心配しすぎて、エンスト&立ちゴケ。ウ〜ン、素敵なコースなのに、最後まで乗り切れなかった。続くETを2番手タイムで走り、冷水CTで、走行後にようやく息が切れた自分に気付いた。定義では毎回心拍数があがっていたのに。ようやくテストを攻めた実感が湧いてきた。そして先にスタートしてフィニッシュした高橋さんが、拍手をして迎えてくれたのも嬉しかった。共に苦労し、攻め抜いて、乗り切る。JECの好きなところは、選手同士が讃え合えることだ。TCやPFでお互いの姿を確認する。声を掛け合う。本当に素敵な競技だ。このアタックで4分6秒49を出して、最後の最後で大会唯一のクラストップタイムをマークできた。
PFに集まったライダーと握手する。長かったレースもついに終わりだ。
電車で夕張まで駆けつけたIBの前橋孝洋選手は、電気系トラブルが出てしまった。タイヤ交換はRABACONDAで一気にビードを落とす作戦だ
公道を走るレースだから、交通法は遵守。踏切でももちろん一時停止して通過する
IAワタライは昨年の日高に続いての北海道レース。廃墟好きという僕と共通の趣味があるので、レース後、ルートで走ったテーマパークを探索
DAY2、IBクラスを制したのは北海道在住の村田竜志選手。初日優勝した西森裕一選手は、タイヤが度々外れるトラブルでリタイアを喫していた
もっとシンプルに考えればいい
IAワタライや隣のピットの釘村選手も無事ゴールしてきた。IAワタライはだいぶコースに慣れたようで、2日目をとても楽しめていた。しかも本人が自信なかったというXTで、悪くないタイムを出していた。
釘村選手は、この日も2位の内山選手に58秒58の差をつけて優勝。彼は金曜日に長いエンデューロテストを一人黙々と歩いて下見していたし、1日目の終了後にも、懸念されるテストを肥後メカと下見しに行っていたようだ。モトクロスIAライダーは下見を重要視して、苦手なセクションを克服し、自分のラインを見つけて創造する。若年時から幾度となく繰り返してきた彼らには当たり前の行動だったようだが、僕も少しでも真似していたら、丁未CTでのスタックは防げたかもしれない。
めまぐるしく色々なことが起こり、過ぎ去っていくエンデューロ。僕の前を走る全日本レディースライダーの凄さを、今回も感じた。川で転倒した際に一度助けたのだけど、恐らく僕の手助けなどなくても、瞬時にリカバリーしていたと思う。走破力もリカバリー力も高い。
レース後に岩本恵美さんと少し話せたのだが、僕の心配事がふっとんだ。彼女は「私は日本一遅着を経験している、遅着のプロ(笑)」と自称する。タイムに遅れても、TCで時計を見て、走行するべき時間を足せばいいだけのこと。走行中に時計を見てもタイムが縮まるわけでもないし、頭をこんがらせる必要もない」と。
だから、もっとシンプルに考えればいいのだ。冒頭の近藤さんじゃないけど、オンタイムレースの魅力は、数えきれないほどある。「簡単だからみんなおいでよ!」とは言えないし、言わない。だけど、これだけは言える。オンタイムエンデューロは最高に格好よくて、楽しすぎる!
追伸:今年からエンデューロもIAになったワタライが「たとえビリだとしても、(IBよりも)IAで走るほうが満足できるし、意義があり、ためになる」と話していた。今年はBクラスに専念すると決めた僕だけど、定義に続き2回表彰台に立てたので、最終戦SUGOは全日本ナショナルに再挑戦するつもりだ。苦戦すると思うけど、それでもいい。とりあえず、飛び込むだけだ。
丁未CT1でアタックする。美しいけれど、多数の溝切りでフロントアップしたり、オフキャンバーがあったり、ワダチが出来たりと、かなり難しかった。せめてキャメルバッグとウエストバッグを置いて攻めるべきだったかな
B1クラス2位を獲得!
優勝はプラザ阪下の監修で有名な川口貴司選手。3位は両日ご一緒させてもらったMSニュートン店長の高橋信也選手
◎本誌宮崎の結果
B1クラス総合 2位/6台(DAY1:2位 DAY2:3位)
月刊『ダートスポーツ』2013年10月号(http://www.zokeisha.co.jp/dirtsports/archives/2757)
に掲載された記事となり、情報は発売日当時のものとなります。